木下牧子 作曲 「おんがく」 ~神様だったらみえるのかしら~
澄み渡ったあたたかな歌声がウェル戸畑大ホールを包みこんだ。
素晴らしいSKOLION(スコリオン)アカペラだった。ほぼ、完璧な響き。
パートごとによくまとまっているし、個人の声は全く飛び出ていない。
癒された、という言葉だけではとても不十分なほどあたたかく、やさしく、柔らかく、女性らしく、豊か。
ひさしぶりに合唱を聴いたな~。
思えば私がこの道を歩み始めたのは、合唱との出逢いから。
ただの合唱ではない。西南女学院音楽部(合唱部)というと、現在は合唱コンクール全国大会出場は珍しくなく、そして金賞受賞も果たしている実力の団。
私の高校生活全てだった。
そういえば当時、彼氏に「僕と合唱、どっちが大切だ!?」と言われ喧嘩になり、始めて彼を(鬱陶しい・・・)と思ったのでした^^;
すでに私の中では音楽が優先順位1位だったということ。。。
高校3年間で歌った曲はなんと80曲以上だった。このことを当時、指揮者である完戸先生に言った時、
先生自身も驚かれていた。そんなに歌ったか~~~・・・っと。
そして、今日は愛知県立芸術大学音楽学部同窓会が後援の企画 SKOLION(スコリオン)の演奏会だった。それに母校西南女学院が賛助出演。
久しぶりの懐かしい合唱曲の数々。私がパートリーダーを務めていたころ、各パートのメロディーを何度も何度もピアノで叩いては、リズムうちをし、皆でトレーニングしていた曲がたくさんプログラムに。
懐かしい。今でも歌詞はすべて覚えていた^0^
三善 晃 作曲 女声合唱のための「三つの抒情」
前奏が始まると、すぅ~~~~~っとトンネルをくぐって、タイムスリップした。
そこには16歳の私がいた。「北の海」の伴奏を聴く。
こうやって客観的にこの曲を一音楽家として、客席から聴いて、この曲の素晴らしさを改めて知ることができた。
すごい。ピアノで表現される波の様子。
ララララ、ラララララ…
海にいるのはあれは人魚ではないのです。
これを歌っていた頃は、その音程の難しさにひぃひぃ言って、
小節ごとしか目に入らなくて、虫眼鏡で一小節ごとを大きくして読むように歌っていた。曲全体の構成なんてとても私には把握できなかった。皆、ひたすら完戸先生の指揮に身をゆだねるしかなかった。
今日その曲を再び聴いて、なんておしゃれな曲だろう!と感動した。
なんだ!
ただ、荒れた波の音階にのって、あれは人魚じゃなくて、波なんだよ、って中原中也が言っているだけの曲・・・(笑)
そう思ったら、もしかして音階に追われて一生懸命技術を重視するより、もっと詩が届くように表現するだけで軽くて、素晴らしい曲になるかも、なんて思えたりした。
プログラム最後の「落葉松」は最初のフレーズ ~落葉松の秋の雨に私の手が濡れる~
と始まると思わず目頭が熱くなり、涙がこぼれそうになった。
これは私が初めて歌った合唱曲。そして高校の3年間、何度歌ったか数えきれないほど歌い、NHK合唱コンクールでも必ず入賞した、歌いこみに歌いこみを重ねた曲だった。
その曲を当時と同じ指揮者と伴奏者、完戸真人先生、吉冨淳子先生 のコンビで聴くことができたのだから。その舞台上には客席に居る私の心も一緒にいた。
この偉大なる二人の音楽家なしに、今私は歌っていないんだ。と思うと運命の出逢いに感謝するのみ。