椿姫が愛されるのはあらすじが簡単で音楽のメロディーがどこをとっても美しいことのほか、
作家デュマ・フィスの実体験をもとに書かれたものであるからであろう。
時代背景こそ違うが、人間ドラマはオペラのという世界のために特別作られたものではなく今現代もなお普通に起こっている日常的な出来事である。
2010年11月のヴィオレッタ役を演じた一週間前。フローラ役として舞台を踏む。
2幕2場フローラ邸でのシーン。
たしか、この時は練習で二役を詰めて稽古していたのに、声は健康だった。
ただ、この公演の直後からスタートしたヴィオレッタへ向けてぐぐぐぐ~っと精神的に少し疲れが出たのか?いざ、タイトルロールの時に不調だったという悔しい思い出だ。
そうこのフローラの時は表情からみても、だいぶ楽しんでいたなぁ~と思える。
演出の井原広樹さんはフローラという女性を完全にヴィオレッタのライバルとして設定。
ヴィオレッタさえいなければ、私はこの裏社交界のトップよ!
原本ではこのフローラに当たると思われる、オランプという金髪の女性が実際に存在し、ヴィオレッタ(原本ではマルグリート)よりスタイルも美貌も上だったとか。オランプは病気で弱って、落ちぶれていくヴィオレッタを見て心底心配する前にどちらかというと喜んでしまうような友人だった。
一方マルグリートにはもう一人友人がいて演出家によってはそのもう一人の友人の方をフローラに充てる場合もあるようだ、むしろそちらのほうが一般的かもしれない。
原作ではヴィオレッタを愛するが故、アルフレード(原作でのアルマン)はこの金髪の彼女を自分のものにしてしまうわけだから今回の井原氏の解釈のように、オペラの台本家がはっきりとフローラをオランプと設定したならば、あらすじはもっと面白くなりオペラの台本も4幕くらいまで行ったかも?しれない。
・・・というか、フローラもっと出番ほしい・・・
アルフレードがフローラと結ばれてしまうくらい毒気をもった女性を演じなければならなかった。
まぁ最も、アルマン(アルフレード)はオランプ(フローラ)のことを好きになったわけではなく、マルグリート(ヴィオレッタ)の気を引くために彼女より美しいといわれるオランプと付き合うのだが。
案の定、マルグリートはそのことに大きなショックを受け、病気を悪化させてしまうわけだ・・・
そのことをアルマンはどれだけ後で後悔したことか。
なぜならオペラのように彼女の死に目に会えなかったからだ。
フローラ:あら~、なんだか大変そうじゃない?ちょっと何があったかじっくり話してよ~
ただ、少ない出番で、そのカラーを存分に出しきるにはかなり強引にその役を表現しなければならなかった。下手をすると嫌味なだけになる。
どこから見ても高級娼婦、そしてヴィオレッタの後、裏社交界のトップの座を狙う女と思わせる面持ち、「毒気」を出すことを求められた。
無事カーテンコールです、フローラって面白い(笑)だいぶ楽しんじゃいました。
↑指揮:ダニエーレ・アジマン、演出:井原広樹